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排泄行為時における汚染感覚に関する考察(男性編)

吉政 巧

【1.序文】 【3.考察】
【2.検証】 【4.補記】

【1.序文】

 トイレで用を足した後、手を洗わずに出ることは一般にタブーとされている。(そこに慣習や儀式的な意味合いを持つ地方もあるが)、汚物に接触したあるいはその可能性のある手は“汚い”からである。そして排泄物に触れることで起こる様々な悪影響を未然に防ぐために、手を洗浄することは十分に有意義である。

 さてここでひとつの疑問がある。
 それでは“小”を済ませた後と“大”の場合では、どちらがより汚いのだろうか。想像してみよう。“小”をしてきた者と、“大”をしてきた者とでは、どちらの手を、より握りたくないと思うだろうか。無論、両者とも十分に手を洗っているものとする。おそらく大多数の者が“大”後の者との握手を嫌がるだろう。
 しかし、果たしてこのような意識の動きは本当により汚いものを選んでいるのだろうか。
 なお、以降の考察は男性にのみ当てはまるものであることを先に記す。

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【2.検証】

 まず、ふたつの排泄行為のプロセスについて、あらためて確認してみたい。一般的な平均男性の行動パターンは次のとおりである(表1「排泄プロセス」参照)。それぞれ相当される行為をそろえ、時系列順に記載した。
 ちなみに最近特に普及してきたウォシュレットケースは今回は除外するものとする。

FASE (a)排尿行為について (b)排便行為について
トイレに入る トイレに入る
ズボンのチャックを下ろす ズボンを脱ぐ
パンツの窓から取り出す  
手で位置を定める 便器に座り、あるいは腰を下ろす
排尿 排便
  トイレットペーパーを必要量とる
手、もしくは腰で振り、残液をとる 肛門を拭う
パンツの中にしまう  
ズボンのチャックをあげる ズボンをはく
トイレを出る トイレを出る
表1「排泄プロセス」

 さて、このプロセスを検討すると、ふたつの排泄行為において大きく異なるフェイズは3か所。“a−ウ及びク”、“b−カ”である。ここを比較することにより、次のことがわかる。
 この3つのフェイズはともに手が局部にもっとも近づくところである。しかし、排尿行為のふたつのフェイズは直接局部に接触するのに対し、排便行為においてはトイレットペーパーという遮蔽物が直接の接触しないようにしている。
 特にa−クにおいては、ともすれば排泄物自体への接触という最悪の事態を引き起こす危険性をはらんでいる。しかしながら、排便行為には意図的に触れようとしない限り、局部に手が接触することはないのである。もっとも接近した位置となっても、トイレットペーパーが破ける、狙いがはずれる等の、人為的問題が発生しないかぎり、局部および排泄物に触れることはない。

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【3.考察】

 以上により、局部に接触することによる実際の汚染率については、排便行為の方が少ないということがわかる。(図1「排泄行為時の汚染模式図」参照)
(a)排尿行為
排尿行為
(b)排便行為
排便行為
図1「排泄行為時の汚染模式図」

 これはすなわち排尿行為よりも排便行為の方が清潔ということである。ゆえにトイレから出てきた者と握手する場合、“小”後よりは“大”後を選ぶべきなのは明らかであろう。
 もちろん、これは極端な例であり、手を洗わないでもよいという事を奨励する者でもない。しかしながら、マナーや慣習にとらわれずに考えた場合、前述の結果は紛れもない真実であるといえる。

 このような汚染感覚の逆転現象の原因については、現在もなお研究中ではあるが、現時点では行為の簡易さによるのではないかと考えられている。つまり、わざわざ個室に入りパンツをおろすという高負荷の動作より、もっと気軽にできてしまうことにより、『お手軽=大したこではない』という認識ができてきたのである。

 汚染感覚のギャップにより排尿軽視の傾向は現在もなお根強く残っており、そのため公衆トイレ等においても排便行為後には手を洗うが、排尿行為後は手を洗わずに済ます者を見受けることがある。より汚染率の高い排尿行為であるからこそ、その後のケアはしっかりとしていただきたいものである。

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【4.補記】

汚染率=(局部×対象物×心理)/トイレットペーパー浸透率
 最後に汚染率の数値化の試みについて触れておきたい。
 局部接触における汚染率は右記のように規定することができる。
 「局部」については実際の部位の他、排泄後や洗浄後といった、状況によっても値が変化する。
 「対象物」としては手のほか、足、口など局部へ接近あるいは接触する可能性のあるものを示す。
 「心理」は、汚染感覚のギャップを考えていく上でもっとも重要なファクターであるといえよう。心理的背景を無視した場合は変数は1とする。この場合、実際の汚染率は、トイレットペーパーの浸透率によって大きく変化する。

 汚染率とは、「浸透率」という物的現象と、「心理」という心的意識との、パワーバランスによってなりたっているとみることができる。

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