CHART-DATE : (1999/07)
作品
ローラ疾走
… ラン・ローラ・ラン

(監督+脚本:トム・ティクヴァ)


お話

 ローラ走る1。ローラ走る2。ローラ走る3。


お話

 主人公ローラ、ひたすら走る走る走る。その疾走感たるや、ジェットコースターの体感ところの騒ぎじゃあないのよ。
 なんちゅー活きのよさ。すごい! カッコいい! おもしろい!!
 手堅くまとまったせせこましい映画を吹き飛ばすかのような、スピーディかつアバンギャルドな映像。バックに流れるアッパー系ジャーマンテクノ。3つのマルチエンディング形式というトリッキーなストーリーもさることながら、映像表現もトリッキー。アニメやビデオ、フィルムやスチルとあわゆる映像をゴチャ混ぜにして、なおかつそれがきちんとおさまっている。

 とにかくオープニングからすごい。警官が蹴り上げるサッカーボールと一緒にカメラがガーッと引いていくと、そこには群衆が描き出すタイトルバック。すごい。映画を見ていて久しぶりに鳥肌が立った、マジで。
 イカしたオープニングのあとは、もうローラが走り出す。不必要な前戯は一切なし。切れ目なし。弛みなし。もうオレのハートは鷲づかみ状態のままなのだ。

 ローラの選択肢によって3つのエンディングが用意されているのだ。いっけんゲーム感覚のようでもあるが、実はそれはあくまでも手法によるものであって、何度でも遊べることを目的としたゲームとは本質的に違いがある。ここではつまり『運命は些細な判断/行動でいくらでも分岐/変化する』という、反運命論的なテーゼがなされているのだ。

 それを際立たせるのが写真で挿入されるサイドストーリー。マルチな運命はローラだけではなく、本筋とはぜんぜん関係ない行きずりの人々もまた然りなのだ。でもってその表現方法がすごい。これからの彼ら人生はスチル写真によるサブリミナルすれすれ(?)のカット手法。ボーッとしてるとなにがなんだかわからない超速インサートカットだが、のっけから映画に集中している観客にはビンビンに響いている。

 圧倒的な映像感覚、ストーリー構成に打ちのめされた。傑作。


お話
  1.  ローラの選択だが、
    • ブランチ1→ローラ死亡。
    • ブランチ2→恋人マニ死亡、残された自分は銀行強盗の犯人。
    • ブランチ3→カジノで大もうけマニも金を取りもどしてハッピーエンド。
    表面的にはハッピーエンドでよかったよかったとそうみえるのだけれど、実はどれもアンハッピーエンド。だってあんなヤクザもののマニとの腐れ縁が続くなんて、ぜってー不幸じゃん。とそのとき劇場にいた90%の観客は思ったに違いない。
  2.  でもどんなに運命が分かれても常に不幸な目にあってしまうヒトはいるもので、どのブランチでも結局、車をぶつけちゃいけない相手にぶつけてしまう男はいる。運の悪いやつは永遠に運が悪いってことだね。はっ、てことはやっぱり運命不変論なのか?
  3.  ローラ疾走スタートの合図となるTVのバラエティ番組の掛け声であるところのドミノ倒しの中居くんは、98年のCX27時間夢列島に違いない。

お話
★★★★★

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