CHART-DATE : (1999/10)
作品
第六感
… シックス・センス

(監督:M・ナイト・シャマラン)


お話

 かつて治療に失敗した少年の魂は、実はもうひとりの少年と入れ替わっていました。でもそれは少年と医師、ふたりだけの大切な「秘密」。
 あるいはシックスセンスの秘密は誰にも話してはならない。

 え? 映画が違う?


お話

 全然ホラー映画じゃない。怖がるような映画じゃない。確かに恐怖的なシーンはあるけれど、ショッキングホラーではないし、怖がってください的な作品ではないのだ。
 それも当然、だってそもそも恐怖映画じゃないんだもん。だからホラー映画を期待して観に行った人にとってはがっかりだったかもしれない。内容も地味だし。が、しかし、そういうフィルターなしでもすごく面白かった。少なくともオレにとっては。いいドラマだった。

 煎じ詰めると、癒しの物語(流行りみたいだけど)なんだよね。霊視能力を持つ少年はいかにしてその恐怖や孤独感疎外感から癒され世界と折り合いを付けることができたか。それは医師の手によってなされたのだけれど、そのこと自体が医師の癒しにつながるという、(生きている死んでいるは関係なく)人と人とのつながりを描いた話。

 はじめは少年の能力が本当にあるのか、あるいは幻想妄想なのかが話の焦点になるのかと思ったのだ。その真相を暴くみたいな話ではなく、いかに折り合いをつけていくのかというような展開のね。
 だって、たとえ客観的には精神病理的な妄想だとしても、少年の主観ではそれは真実であり、それがどうやって癒されていくのかということこそが大事じゃないか。そういう話が観たかったというところもあったし。
 しかしストーリーは早々に霊感があることは確かなものとして規定してしまう。この作品世界ではそういう設定なのだとすること自体は問題ではないが、そうなると作品の落としどころはどういう風になるのか。
 この作品では、最終的には死者がいる世界を認め、折り合いをつけることで救われる。また異端者である自分を理解してくれる者(この場合母親だが)を見いだすということがカタルシスとなっていくわけだ。

 話は割と地味なのだが、堅実な演出の妙が冴え渡る。うまい。脚本をただなぞって映像化するのではなく、絵としてみせる。台詞だけではなく絵で説明できる。だから重層的な深みが出てくる。伏線も張った分だけきちんと目配りできている。実はそれが普通なんだけれど、張り逃げの作品ばかりの昨今、しっかりと構成できていること自体が評価されてしまえる(それじゃいけないんだけど)。おそらくそれは自作脚本自作演出ということからくるのだろうか。それにしてもいいよ。
 内容にあわせた落ち着いたフィラデルフィアの晩秋を描くカメラワークもまた見事なり。

 そしてあの秘密。なるほど、そうくるか。オレは女の子の葬式にふたりでいくあたりからなんとなくそういうことなのかな、という可能性に思い至っていたので、驚愕の秘密という程ではなかったが、しかし演出の冴えによって実に感動的なラストとなっている。細かい部分でいえば、例えば場面転換がそれまで全て暗転だったのが最後だけホワイトアウトさせる。つまり浄化されたことを象徴的に描いている訳ね。そういう細やかな演出をしてはじめて活きる感動だと思ったわけです。
 その秘密を知ると、それまで違和感のあった人間関係がすごくなるほどと納得できる。もう一度秘密を知った上で見返したくなる。確かにもう一度観たくなるわけです。

 話よし、演出よし、でいうことナシ。


お話
  1.  ブルースウィリスが体力役者としてではない、本来の演技者としての実力を発揮しまくり。で相棒の少年もまたたったひとりで霊視能力を持ったが故の苦悩や恐怖を実にうまく表現している。これもまた見事。実際、現実に霊視能力があって、7歳の少年にそれに慣れろとか耐えろというのはすごく酷な話だものね。
  2.  ちょっとしたエピソードで、インド系のカップルが指輪を買うエピソードがあるがなんか唐突だなと思ったら監督がインド系だったんですね。

お話
★★★★★

ページトップにもどる