CHART-DATE : (2003/07)
作品
生きる屍の夜
… ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

(監督:ジョージ・A・ロメロ)


お話

 ギクシャクギクシャク、ンガァ!(ゾンビ視点)


お話

 ドキュメンタリータッチなのはモノクロだからだろうか。あるいは役者が素人っぽいからか。なんにせよ、ドラマチックな映画ではない。クールというのとも若干違うが、登場人物たちとの距離を普通より大きくとった印象がある。

 今更の古典ではあるが、あらためてみると、怖いという映画ではなく不気味といったほうが似つかわしい。全編にわたる不安感と焦燥感がこの作品のコンセプトであろう。実のところ初見だったわけだが、思ったより、陰惨な話ではなかったのも意外であった。
 第一、ゾンビが人を襲うというのは基本フォーマットではあるが、映画としてはそれがメインストーリーではなく、むしろ、家屋に閉じこめられた人々の心理劇である。いかに生き延びるか、それに対して、いかに他人を出し抜くのか。疑心暗鬼のなかでの戦い。結局一番怖いのは人間である、そういう話である。
 これ以降のゾンビ映画では、ゾンビ自体が恐怖の対象になるわけだが、この作品においては、観客にとっての恐怖の対象はゾンビではなく、閉じ込められた人間同士であり、閉じこめられた状況そのものなのだなぁ。と思った。

 クールだなと思ったのは、ラストのゾンビ狩りのシーンで、誰もが嬉々として退治をしているところ。ハンティングを楽しんでいるかのようにも見える。いや明らかに楽しんでいるのだろう。そうなってしまえばゾンビはもはや恐怖の対象ではない。そしてそんなアッパーな状態からラストの無常観。結局、怖いのは人だというモチーフが別の角度から語られているのだなと思った次第である。

 まあ、その後の影響力などを忘れて、映画として観た場合、そんなに面白いというほど面白いわけでもないんですけどね。


お話
  1.  ゾンビが、思ったよりも普通に動くのがまだ黎明期のゾンビって感じで面白かった。ときおり普通に歩いたり、動作が速くなったするのね。まあエキストラがヘタなのせいもあるんだろうけれど(あるいは、ゾンビ演技の基本パターンが未確立なのか? んなこたないか)。
  2.  とりあえずゾンビって云っちゃうけど、この作品中ではまだグールって呼称されているのがなるほどだった。でもクレジットロールではゾンビって表記されてるんだよね。アニバーサリーとしての年月の間に“ゾンビ”というモンスターの種族が確立したんだなぁと感慨深いものがある。
  3.  それにしても、心理劇の「ナイト・オブ・・・」から、モンスターホラーの「ダウン・オブ・・・」への方向性の大転換。ロメロが撮りたかったゾンビ像というのは、いったいどういうものだったのだろうかと思わずにはいられない。

お話
★★★ ☆☆

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