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八重山にマブイ落としに  …16

 大都会石垣島とその夜   

 正味2日しかいなかった竹富島なのだが、すでに何年もそこにすんでいたかのような懐かしさを感じていた。それでいて、あっという間の2日間だったようなそんな感じもあり、とにかく時間の感覚が信じられない程に狂っていた気がする。
 ともあれ、夢のような竹富島ライフはここでおしまい。残る2日は石垣島で送る計画なのだ。桟橋でオジィに見送られながら、来たときと同じ青い海を連絡船は疾走し、ふたりを石垣島に運んでくれた。

 石垣島についてみて、ふたりは愕然とした。まさに言葉もなかった。
「大都会かここは?」
 そうなのだ。数日前、来た時には全然なにも感じもしなかった石垣島の舗装された2車線の道路や、コンクリ2階建ての建物に囲まれて、ふたりはとことん、都会につれてこられたおのぼりさんの気分を味わっていた。落ち着いて考えてみれば、それだけ竹富島が他とは違うということなのだろうが、しかしオレもぽんすけも竹富島の風景が身体の心底まで浸透していたらしい。
 もっとも、その後、石垣島を観光していく中で、そんな都会は港付近だけということがわかり、また身体が街になれてくるにしたがって、都会のイメージは消えていった。慣れというものは恐ろしい。

 さて、なぜ石垣島に2泊もしようと決めたのかというと、観光という意味ももちろんあったことはあったが、その答えは夜にあった。もちろん下ネタ系の欲望ではない。旅行に行ったら、その土地の飯屋で旨いもんを食いたかったからに他ならない。そして、そのためには2日くらいほしかった。というわけなのだ。
 石垣島に戻ったその晩は、地の魚をメインにした寿司屋で勝負した。酒はもちろん泡盛である。この店には60度という強烈なやつがあり、これをロックでいく。旨い。濃い酒なのに刺身や寿司となぜかあうのだ。
 そしてその後は、ちょいと小洒落たバーに河岸をかえる。実は、前から泡盛のようにクセの強い酒ならどんなカクテルができるのだろうかと前々から考えており、地元のお知恵を拝借しようと思ったのだ。店に入るとメニューをチェックする。しかし、ない。泡盛はあっても泡盛ベースのカクテルはなかったのだ。バーテンダーにきいてみると、「いろいろ試してみたがクセが強すぎて美味しいカクテルできなかった」とあっさりいわれてしまった。

 翌日の夜は石垣島地ビールの飲める創作料理満載の居酒屋で勝負する。安くてうまくていい店だった。

 と実にうまい2夜を送ることができたのではあるが、しかしオレの本来の目的は、全然果たされていない。なにしろ、ヤシガニを食ってない。そして民謡酒場にも行けなかった。非常に悔しいかぎり。が、おかげでまた行く理由ができたと考えれば、行き逃すこともまた旅の極意なのだろう。


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