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八重山へ今度こそマブイを拾いに?  …8

 放任ジャングルツアー   

全景
びろびろびろ〜
アップ
この異形ぶりは確かにすごい

 さて後半戦。
 ホンゴーさんは、初心者女性陣は体力的にかなりしんどい様子と判断し、今日はここで引き返すことにした。
 で、我々男性陣だが、こちらはまだ余力あり、そしてこいつらはほおっておいても大丈夫とみたのか、
「もしよければ3人でもう少し上流まで行ってみませんか。もう少し行くと観光船の発着場があって、そこで上陸してしばらく歩くとサキシマスオウノキの大木があるんで見てくるといいですよ」と言った。
「こっちはゆっくりと下っているので、すぐ追いつけるでしょう」
 ならば、ということで我々3人は再びエントリーすると2人プラス一人とは反対の上流にバウを向けた。
 放し飼いにはなったが、はしゃぐこともなく黙々と上流に向かう。ほんの10分程も漕ぐと、鉄パイプで組まれた本当に簡単な船着き場が現れた。さっそく、カヌーを船着き場、ではなくその横の溜りに着岸する。
「ここで結び目ほどけてカヌーが流されちゃったりすると大笑いだ」
「逆にほどけなくなっても面白いことになるけどな」
「カヌーって乗るときと降りるときが一番沈しやすいんだ」
などと冗談を言い合うが、よく考えるととても怖い想像なのだった。言っておいてビビっていちゃ世話がない。
 ジャングルの中に作られた木製の遊歩道を行く。観光船の到着時間の狭間で誰もいない。我々3人だけがあたりを独占しているのだ。静かだった。生き物の声はあったのかもしれないが、オレはそこで静寂を感じていた。あるいはジャングルの気を感じていたのかもしれない。

 数分も進むとサキシマスオウノキの大木があった。幹からうねうねと広がり伸びるヒダのような根。異形といってよいだろう。確かにこれを見に、わざわざ来るだけの価値はあった。

 船着き場に戻ると、カヌーは流されることもなくちゃんとあり、そしてエントリー時に水中に投げ出されることもなく、ごく普通に川面の上の人となった。
 おそらくちょっと気合いを入れて漕げばあっという間に先行の3人に追いつくだろうとは容易に想像がついた。「一応ツアーなんだし、早いとこ追いついてホンゴーさんを安心させたほうがいいかな」と思わないこともなかったが、反面、「そんなに急いで追いついたって全然面白くないだろう」いう気持ちもあった。
 昼間だし。いい天気だし。時間はとりあえずたっぷりあるし。
 いいじゃん、テーゲーでいこうよ。
 結局そのときの気分に正直に行動することになった。のんびりと漕ぎ進める。数時間川の上にいた成果がでてきていた。カヌーはかなり身体に馴染んできていた。
 出発時にホンゴーさんは、
「午後になると河口のほうから吹き上げてくる向かい風がきついので、帰りは結構大変かもしれませんよ」
と言っていたが、そんなことはない。ここはまだ上流だからだろうか。のんびりとゆったりと川下りを満喫する。そうこうするうちに、川の向こうに浮かぶカラフルなかたまりが見えた。先行の3人だった。あれだけのんきに漕いでいたにもかかわらず、結局20分程度の差しかなかったのだ。我々以上にのんびりとくだっていたに違いない。オレ達もまだまだせっかちということだ。多分。

 下り行は一度通ってきた道ということもあるのだろう、自然、心に余裕がでていた。川を下ることよりも、まわりを眺めまわすことに気持ちをおくことができるようになっている。マングローブの林の中にある高さ1.5メートル程もあるアリ塚に驚いてみたり、砂の上を走り回るシオマネキのダンスに笑ってみたり、ようやくエコツアーらしくなってきた(もちろん、今までもそうだったんだが)。
 先行する長丼が「お!」と左のほうを指さした。つられてそちらの方を見ると、目の端を青いものが走り抜けていった。そのことをホンゴーさんにいうと、
「たぶんリュウキュヤマショウビンですよ。青かった? だったら絶対そうです。なかなか見ること出来ないんですよね、ラッキーですよ」
ホンゴーさん自身ここ1年で数回も見ていないのだそうだ。こと生き物に関しては我々は恵まれているらしい。そして動物遭遇事件はこの後さらにヒートアップするのだが、それはおいおい話すことにする。


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