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ソウルぶらり旅  …7

 オッヘンロール! お調子者   

 空を見上げると、依然どんよりムードではあれどところどころ雲が薄くなっており、どうやら僅かずつでも晴れていきそうな予感。
 今日は、まずは宿から程近い、大韓仏教チョゲ宗の総本山『曹渓寺』に行く。が、着いてみれば外装の改装中で、本殿はぐるりと足場が組まれている。これではただの工事現場と変わらないではないか、と思いつつ眺めていると、ぽつりぽつりと人が本殿に入っていく。(無礼とは思いつつも)覗いてみると、中からは読経が聞こえてくる。目を凝らすと皆、真摯にお祈りをしている光景が目に入ってきた。観光地ではない仏教。そういう感じである。物見遊山のオレには場違いなところか? と気後れしてしまった。これではまるで追い払われた悪鬼ではないか、と思いつつ早々に退散する。
 寺のまわりは仏具店が多く集まっているのだが、まだ10時前という半端な時間で、どの店もようやくドアを開けた程度で、これではひやかしもできない。ここへは後ほど出直すことにして、少し歩いたところにある本屋『教保文庫』に行く。ソウル一大きいという名にしくない広さではあるが、俺が求めるサブカル系、つまりマンガ部門はそんなに多くなく、しかもほとんどが翻訳物でご当地作品はまったくといっていいほど見つけられなかった。
 マンガがダメなら音楽を、というわけでCDコーナーに移動する。訪韓するときから、いいモノがあれば買おうと思っていたのだが、実のところ、ここ2日間、宿でTVを観ていてもピンとくるアイドルってのは見つからなかったので期待薄なのだ。どうも韓国のPOPシーンはダンスミュージックが主体、あとはバラード、という印象なのである。そういうのも嫌いではないんですけれど、今は、バリバリのアイドルチューンな感じのモノがオレブーム(前からか)なので、結局、迷いに迷って購入見合わせというわけ。30分近くもグダグダした結果がこれじゃ身も蓋もない。もっとも、右足がまだ本調子ではないので、あまり彷徨かない観光としてはよかったのかもしれない。ちなみにショップを見た限りではあるが一番人気は、やはりBOAで、帰ってきてから「やっぱり買っておけばよかったかしら」と少々後悔している。

 なんだかかんだで、11時になってしまった。昼食タイムだ。今日は今回一番狙いの犬鍋。店は『ボドゥナムチッ』。場所がわかりにくく、またまた迷子になりつつもどうにかたどりつき入ってみれば、時間が時間なだけにまだ客などいない。店の人たちも全然緊張感がなくまだまだ歓談中といったところ。
 さて、ここはひとついろんな食べ方にトライというわけで、補身湯とスユッを食べたかったのだが、念のため「ひとりでも食べられる?」と聞いてみると「無理!」といわれてしまう。「だったら、肉鍋にしなさいよ」とのアドバイスをありがたく受けることにした。出てきた鍋は、ドン!という感じで、確かにこんなのが2皿も出てきても持て余してしまうことは必至だった。ともあれ、箸を手に取る。味は思っていた以上に淡泊。が、香辛料と恐ろしく香りの強い野菜(ヨモギか?)が効いており、本来の味とは微妙に異なっているのではないだろうかと思う。肉、といってもスジもモツもふんだんに入っており、食感はクニクニした印象である。もっとも肉自体は下ごしらえがよくされていてハラリと実に柔らかい。前述の野菜は少々癖があって人によっては好き嫌いがあるかもしれない。全体的な感想としてはけして洗練された食べ物ではないが、一度は食べておいてもいいと思う。オレはリトライしてもいいな、と思った。
 客がひとりもいないせいか、気をつかっていただいたのか、たまに店の人がやってきては食べ方を伝授してくれたり、鍋からとってくれたりと、至れり尽くせりでうれしい限り。そんな感じでたらふく味わったのだった。ところでイヌ肉は精がつくといわれているのだが、その効果がどんなものなのかはわからなかった。


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